平成28年度 春期 ITパスポート試験 問31 解説 範囲の経済と規模の経済
事業コストを低減する方策として“範囲の経済”を追求する方法や“規模の経 済”を追求する方法などがある。範囲の経済の追求に基づくコスト低減策として, 適切なものはどれか。
- ア. 共通の基盤技術を利用して複数の事業を行う。 ✓ 正答
- イ. 継続的な業務改善を行う。
- ウ. 工場での生産量を拡大する。
- エ. 同一製品を複数の工場で生産する。
解説
範囲の経済と規模の経済を見極める
この問題は、企業経営におけるコスト削減の戦略的アプローチである範囲の経済と規模の経済の定義を問うています。判断基準は以下の通りです。
- 範囲の経済:複数の事業でリソースを共有することによるコスト低減(多角化のメリット)
- 規模の経済:生産量を増やして単位あたりの固定費を下げることによるコスト低減(大量生産のメリット)
設問は範囲の経済を求めているため、複数の事業にまたがって経営資源を共有している選択肢を選びます。
経営資源の横展開によるコスト削減
範囲の経済(Economies of Scope)とは、一つの企業が異なる種類の製品やサービスをまとめて生産・提供することで、単独でそれぞれを行うよりもコストが安くなる現象を指します。
例えば、あるメーカーが持っている独自の技術開発センターや物流網を、家電製品の製造と自動車部品の製造といった全く異なる事業で共有できれば、それぞれの事業で個別に拠点を持つよりも大幅にコストを抑えられます。このように、蓄積された技術、ブランド力、販売チャネルなどの経営資源を複数の事業に転用することが、範囲の経済の追求です。
一方、規模の経済(Economies of Scale)は、生産量を増やすことに主眼を置きます。工場で大量生産を行えば、施設や設備の固定費が多くの製品に分散されるため、一個あたりの製造原価が下がります。これは単一製品の大量生産によるメリットであるため、範囲の経済とは明確に区別されます。
なぜこの知識が経営に不可欠なのか
ITパスポート試験でこの項目が問われる背景には、IT投資とビジネス戦略の結びつきを理解させるという意図があります。
現代の企業経営において、ITは単なる事務ツールではなく、ビジネスモデルそのものを効率化する手段です。例えば、社内の基幹システムをグループ全社で共通化し、データを一元管理することは、まさに範囲の経済をITによって実現する典型例です。別々にシステムを構築・運用するコストを省き、蓄積された知見を全社で活用することで、企業全体の競争力を高めることができます。
試験合格後、実際のビジネス現場で「どうすれば今のリソースを使い回して、別の事業領域にも展開できるか?」という視点を持てるようになることは、経営層やプロジェクトマネージャーと円滑に連携するための重要なスキルとなります。