平成28年度 春期 ITパスポート試験 問35 解説 ITガバナンスの定義
ITガバナンスの実現を目的とした活動の事例として,最も適切なものはどれか。
- ア.ある特定の操作を社内システムで行うと,無応答になる不具合を見つけたので,担当者ではないが自らの判断でシステムの修正を行った。
- イ.業務効率向上の経営戦略に基づき社内システムをどこでも利用できるようにするために,タブレット端末を活用するIT戦略を立てて導入支援体制を確立した。 ✓ 正答
- ウ.社内システムが稼働しているサーバ,PC,ディスプレイなどを,地震で机やラックから転落しないように耐震テープで固定した。
- エ.社内システムの保守担当者が,自己のキャリアパス実現のためにプロジェクトマネジメント能力を高める必要があると考え,自己啓発を行った。
解説
この問題は、ITガバナンスという言葉が持つ「経営」と「IT」の結びつきに着目することで正解を導き出せます。「経営目標の達成」という言葉が含まれている選択肢を探すのが、この問題を解く最短ルートです。
ITガバナンスとは何か
ITガバナンスとは、企業が経営戦略を実現するために、ITをどのように活用・統制するかを定めた仕組みのことです。ITを活用して「ビジネスをどう成長させるか」という攻めの側面と、IT利用におけるリスクを「どう管理・統制するか」という守りの側面の、両方の機能を持ちます。
ITガバナンスのポイントは、IT部門が勝手に判断してシステムを構築するのではなく、経営層や経営戦略が目指す方向とIT投資やプロジェクトを一致(アライメント)させる点にあります。
各選択肢の判断ポイント
選択肢イが正解である理由は、経営目標である「業務効率向上」という目的が明確であり、それを達成するための手段としてIT戦略が立てられているからです。組織として体制を確立している点も、統制(ガバナンス)が効いている状態といえます。
他の選択肢が不適切である理由は以下の通りです。 アは、ITガバナンスの観点から見て最も避けるべき「現場による独断」です。システム修正は承認プロセスを経て行われるべきものであり、個人の判断で行う行為はガバナンスの欠如、すなわち統制が取れていない状態です。 ウは、ファシリティマネジメント(設備管理)の領域です。物理的な安全対策はITシステムの運用には欠かせませんが、経営戦略と結びついたIT利用の最適化という文脈とは異なります。 エは、個人の能力開発に関する活動です。従業員のスキル向上は組織にとって有益ですが、ITガバナンスという組織的な仕組みづくりとは次元が異なります。
ITガバナンスの教育的意図
この問題は、情報システム部門の役割を単なる「システムの開発や維持」と捉えるのではなく、経営者や経営企画と同じ目線で「ITを使って会社の業績をどう伸ばすか」を考える視点を求めています。
試験対策としては、ITガバナンスという言葉を見たら、頭の中で以下の要素が揃っているかをチェックする癖をつけるとよいでしょう。
- 経営戦略・目的があるか
- その達成のためにITを活用しているか
- 組織的なルールや体制があるか
これらが揃っていれば、それはITガバナンスの事例といえます。実務では、IT投資の評価や、コンプライアンス(法令順守)の仕組みづくりなどが、まさにこの活動に該当します。