令和5年度第三種電気主任技術者下期試験 機械科目 問70 解説 問7 問7
問7 次の文章は,電気機器の損失に関する記述である。a コイルの電流とコイルの抵抗によるジュール熱が (ア) であり,この損失を低減するため,コイルを構成する電線の断面積を大きくする。交流電流が並列コイルに分かれて流れると,並列コイル間の電流不平衡からこの損失が増加する。この損失を低減するため,並列回路を構成する各コイルの鎖交磁束と抵抗値,すなわち,各コイルのインピーダンスを等しくする。b 鉄心に交流磁束が通ると損失が発生する。その成分は (イ) と (ウ) の二つに分類される。前者は,交流磁束によって誘導された電流が鉄心を流れてジュール熱として発生する。そこで,電気抵抗が高い強磁性材料や,表面を絶縁膜で覆った薄い鉄板を積層した積層鉄心を磁気回路に用いて,電流の経路を断つことで損失を低減する。後者は,鉄心の磁束が磁界の履歴に依存するために発生する。この (ウ) を低減するために電磁鋼板が磁気回路に広く用いられている。c 上記の電磁気要因の損失のほか,電動機や発電機では,回転子の運動による軸受け摩擦損や冷却ファンの空気抵抗による損失などの (エ) がある。上記の記述中の空白箇所(ア)~(エ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- (1) 銅損 渦電流損 ヒステリシス損 機械損 ✓ 正答
- (2) 鉄損 抵抗損 ヒステリシス損 銅損
- (3) 銅損 渦電流損 インダクタンス損 機械損
- (4) 鉄損 機械損 ヒステリシス損 銅損
- (5) 銅損 抵抗損 インダクタンス損 機械損
解説
電気機器における損失は、エネルギーが熱や運動抵抗として失われる現象であり、(ア)は電流と抵抗によって発生する銅損、(イ)と(ウ)は鉄心内で発生する渦電流損とヒステリシス損、(エ)は回転体に伴う機械損となります。
コイルの電気抵抗による損失
導体に電流が流れると、導体が持つ電気抵抗によって熱が発生します。これをジュール熱と呼び、この損失を銅損と定義します。銅損は電流の二乗と抵抗の積()で表され、抵抗値を下げるために電線の断面積を大きくしたり、並列回路では電流が均等に流れるようインピーダンスを揃えたりする対策が取られます。
鉄心の磁気的損失
鉄心に交流磁束が通過すると、主に二つの原因で鉄損が発生します。
渦電流損 電磁誘導の法則に基づき、変化する磁束が鉄心内に渦状の誘導電流を発生させ、この電流が鉄心の抵抗によって熱となります。これを渦電流損と呼びます。対策として、鉄心を薄い板状にして絶縁し、電流の経路を物理的に分断することで回路の抵抗を高め、渦電流を抑制する積層鉄心が用いられます。
ヒステリシス損 磁性体は、磁界の強さに応じて磁束密度が変化しますが、外部磁界をゼロにしても磁気が完全には消えません。この磁気的な履歴(ヒステリシス)に起因して生じるエネルギー損失をヒステリシス損と呼びます。磁気特性に優れた電磁鋼板を採用することで、このループ面積を小さくし、損失を低減させます。
回転機における機械的損失
電動機や発電機のような回転機器では、回転子を支える軸受け部分の摩擦や、回転体周囲の空気との衝突によってエネルギーが失われます。これらは電気的な現象ではなく物理的な動きに伴う損失であるため、機械損と分類されます。
損失の分類と判断
各損失の発生原因を、記述内容と照らし合わせて特定します。
- コイルの抵抗によるジュール熱であることから、(ア)に銅損を特定します。
- 鉄心において、誘導された電流による熱は渦電流損、磁界の履歴によるものはヒステリシス損であるため、(イ)に渦電流損、(ウ)にヒステリシス損を当てはめます。
- 軸受けや空気抵抗などの物理的な運動に起因する損失であることから、(エ)に機械損を決定します。
電線の太さや鉄心の積層構造、回転軸の挙動に目を向けてみると、電気エネルギーがどのような形となって失われていくのか、その経路が見えてきます。