令和5年度第三種電気主任技術者上期試験 機械科目 問30 解説 問3 問3
問3 次の文章は,三相誘導電動機の誘導起電力に関する記述である。 三相誘導電動機で固定子巻線に電流が流れると (ア) が生じ,これが回転子巻線を切るので回転子巻線に起電力が誘導され,この起電力によって回転子巻線に電流が流れることでトルクが生じる。この回転子巻線の電流によって生じる起磁力を (イ) ように固定子巻線に電流が流れる。 回転子が停止しているときは,固定子巻線に流れる電流によって生じる (ア) は,固定子巻線を切るのと同じ速さで回転子巻線を切る。このことは原理的に変圧器と同じであり,固定子巻線は変圧器の (ウ) 巻線に相当し,回転子巻線は (エ) 巻線に相当する。回転子巻線の各相には変圧器と同様に (エ) 誘導起電力を生じる。 回転子が回転しているときは,電動機の滑りを s とすると, (エ) 誘導起電力の大きさは,回転子が停止しているときの (オ) 倍となる。 上記の記述中の空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
- (ア)交番磁界 (イ)打ち消す (ウ)二次 (エ)一次 (オ)1-s
- (ア)回転磁界 (イ)打ち消す (ウ)一次 (エ)二次 (オ)1/s
- (ア)回転磁界 (イ)増加させる (ウ)二次 (エ)一次 (オ)s
- (ア)交番磁界 (イ)増加させる (ウ)二次 (エ)一次 (オ)1/s
- (ア)回転磁界 (イ)打ち消す (ウ)一次 (エ)二次 (オ)s ✓ 正答
解説
三相誘導電動機において、固定子巻線に電流が流れると回転磁界が生じ、この磁界と回転子巻線に流れる電流による起磁力が互いに打ち消し合う関係となるため、固定子巻線は変圧器の一次巻線、回転子巻線は二次巻線として機能し、回転時の二次誘導起電力は停止時の滑り 倍となります。
三相誘導電動機の動作原理と変圧器との相似性
三相誘導電動機の固定子巻線に三相交流電流を流すと、空間的に回転する磁界である回転磁界が発生します。この回転磁界が回転子巻線と交差することで、電磁誘導の法則(ファラデーの電磁誘導の法則)に基づき、回転子巻線に誘導起電力が発生します。
この現象は、変圧器の一次巻線に交流電流を流すと磁束が変化し、二次巻線に誘導起電力が発生する仕組みと極めてよく似ています。誘導電動機では、固定子巻線が変圧器の一次巻線、回転子巻線が二次巻線としての役割を果たします。また、回転子巻線に電流が流れると、その電流によって新たな磁界(起磁力)が発生しますが、レンズの法則に従い、この磁界は固定子から供給される回転磁界を打ち消す方向に作用します。そのため、回転子の電流を維持・補償するように、固定子側からさらに電流が流れ込み、電動機としてのトルクを生み出すエネルギーが伝達されます。
誘導電動機の滑りと二次誘導起電力
回転子が停止しているとき、固定子の回転磁界は回転子巻線をそのままの速度で横切るため、変圧器の二次巻線と同様の誘導起電力が発生します。
一方、回転子が回転し始めると、回転磁界と回転子の相対速度が変化します。この回転速度の差を示す指標が滑り です。回転子が回転する速度を 、回転磁界の速度を とすると、滑りは次のように表されます。
この滑り は、回転子を横切る磁束の変化率を直接的に反映します。したがって、回転子が停止しているとき(滑り )の誘導起電力を とすると、任意の滑り において発生する二次誘導起電力 は、回転磁界との相対的な切断速度に比例し、以下の関係となります。
各空白箇所の特定
- (ア)には、三相巻線に三相交流を流すことで発生する「回転磁界」が当てはまります。
- (イ)には、誘導電動機の電流は発生した磁束を相殺するように流れるため、「打ち消す」が入ります。
- (ウ)と(エ)には、変圧器との対応関係から、電源側である固定子が「一次」、負荷側である回転子が「二次」巻線と定義されます。
- (オ)には、前述の滑りの定義に基づき、回転時の起電力は停止時の「」倍となります。
固定子の回転磁界が空隙を介して回転子に力を与える様子を、巻線同士が織りなす磁気のつながりと合わせてイメージしてみると、エネルギーが電動機へと伝わっていく経路が見えてきます。