第三種電気主任技術者試験 / 令和5年度第三種電気主任技術者上期試験 機械科目 / 各問題解説 / 問50
certification-simodake-work

令和5年度第三種電気主任技術者上期試験 機械科目 問50 解説 問5 三相同期発電機の短絡比に関する記述

設問図

問5 三相同期発電機の短絡比に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. (1) 短絡比を小さくすると,発電機の外形寸法が小さくなる。
  2. (2) 短絡比を小さくすると,発電機の安定度が悪くなる。
  3. (3) 短絡比を小さくすると,電圧変動率が小さくなる。 ✓ 正答
  4. (4) 短絡比が小さい発電機は,銅機械と呼ばれる。
  5. (5) 短絡比が小さい発電機は,同期インピーダンスが大きい。

解説

三相同期発電機の短絡比に関する問題で、選択肢(3)「短絡比を小さくすると,電圧変動率が小さくなる」は誤りです。これは、短絡比が小さい発電機は同期インピーダンスが大きくなり、結果として電圧変動率も大きくなるためです。

短絡比と同期発電機の特性

三相同期発電機の短絡比は、発電機の設計と特性を理解する上で非常に重要な指標です。ここでは、短絡比が同期インピーダンス、電圧変動率、安定度、そして発電機の物理的な構造にどのように関係するかを解説します。

短絡比とは

短絡比 KsK_s は、定格電圧を発生させる無負荷時の界磁電流 IfNI_{fN} と、定格電流が流れる短絡状態を発生させる界磁電流 IfsI_{fs} の比 Ks=IfN/IfsK_s = I_{fN} / I_{fs} で定義されます。 また、実用上、短絡比は単位法で表した同期インピーダンス Xs,puX_{s,pu} の逆数にほぼ等しい関係があります。すなわち、Ks≈1/Xs,puK_s \approx 1/X_{s,pu} です。この関係は、短絡比が大きいほど同期インピーダンスが小さく、短絡比が小さいほど同期インピーダンスが大きいことを示しています。

同期インピーダンスと電圧変動率

同期インピーダンス XsX_s (主に同期リアクタンス) は、同期発電機の電機子巻線が持つ抵抗とリアクタンスの合成成分です。発電機が負荷に電流を供給すると、この同期インピーダンスによる内部電圧降下が生じ、端子電圧が変化します。

電圧変動率 ϵ\epsilon は、無負荷時の端子電圧 V0V_0 と定格負荷時の端子電圧 VnV_n の差を示す指標で、以下の式で表されます。 ϵ=V0−VnVn×100%\epsilon = \frac{V_0 - V_n}{V_n} \times 100 \% 同期インピーダンスが大きい発電機では、負荷電流が流れた際の内部電圧降下 IXsIX_s が大きくなります。これにより、VnV_n が大きく低下するため、V0−VnV_0 - V_n の値が大きくなり、結果として電圧変動率は大きくなります。

安定度

同期発電機の安定度とは、負荷変動や系統擾乱などの外乱に対し、同期運転を維持できる能力のことです。同期インピーダンスが小さい(すなわち短絡比が大きい)発電機は、同期化力が強く、安定度が高いとされます。逆に、同期インピーダンスが大きい(短絡比が小さい)発電機は、安定度が悪くなります。

銅機械と鉄機械

同期発電機は、その設計思想によって「銅機械」と「鉄機械」に分類されます。

  • 銅機械: 導体(銅)の量を多く使い、磁気回路が飽和しやすい設計で、同期インピーダンスが大きい(短絡比が小さい)発電機を指します。鉄の量が相対的に少ないため、一般的に外形寸法が小さく、軽量になります。電圧変動率が悪く、安定度も低い傾向にあります。
  • 鉄機械: 鉄の量を多く使い、磁気回路が飽和しにくい設計で、同期インピーダンスが小さい(短絡比が大きい)発電機を指します。鉄が多いため、一般的に外形寸法が大きく、重くなりますが、電圧変動率が良く、安定度も高いという特徴があります。

設問の判断ステップ

  1. 短絡比と同期インピーダンスの関係を理解する: 短絡比 KsK_s は単位法で表した同期インピーダンス Xs,puX_{s,pu} の逆数にほぼ等しい (Ks≈1/Xs,puK_s \approx 1/X_{s,pu})。この関係から、短絡比を小さくするということは、同期インピーダンスを大きくすることを意味します。

  2. 電圧変動率と同期インピーダンスの関係を把握する: 電圧変動率 ϵ=(V0−Vn)/Vn×100%\epsilon = (V_0 - V_n) / V_n \times 100 \% で表されます。同期インピーダンスが大きいと、負荷電流が流れる際の内部電圧降下 IXsIX_s が大きくなり、その結果、定格負荷時の端子電圧 VnV_n の低下が大きくなるため、電圧変動率は大きくなります。

  3. 選択肢(3)を検討する: 選択肢(3)は「短絡比を小さくすると,電圧変動率が小さくなる」と述べています。しかし、ステップ1とステップ2で確認したように、短絡比を小さくすると同期インピーダンスが大きくなり、同期インピーダンスが大きいと電圧変動率は大きくなります。したがって、この記述は誤りです。

  4. 他の選択肢の正誤を確認する:

    • (1) 短絡比を小さくすると,発電機の外形寸法が小さくなる。 短絡比が小さい発電機は「銅機械」と呼ばれ、導体(銅)の割合が多く、鉄の割合が少ない設計となります。そのため、一般的に外形寸法は小さくなります。この記述は正しいです。
    • (2) 短絡比を小さくすると,発電機の安定度が悪くなる。 短絡比が小さいということは同期インピーダンスが大きいことを意味します。同期インピーダンスが大きいと、系統との間の同期化力が弱まり、安定度は悪くなります。この記述は正しいです。
    • (4) 短絡比が小さい発電機は,銅機械と呼ばれる。 前述の通り、短絡比が小さい(同期インピーダンスが大きい)発電機は、導体中心の設計である「銅機械」と呼ばれます。この記述は正しいです。
    • (5) 短絡比が小さい発電機は,同期インピーダンスが大きい。 ステップ1で確認した通り、短絡比と同期インピーダンスはほぼ逆数の関係にあります。したがって、短絡比が小さい発電機は同期インピーダンスが大きいです。この記述は正しいです。

以上の検討から、誤っている記述は(3)であることがわかります。

短絡比という一つの指標が、同期インピーダンス、電圧変動率、安定度、そして発電機の構造にまで影響を与える関係性を重ねてみると、発電機設計の奥深さが見えてきます。

参考リンク

学習の記録にははてなブックマーク!

気づいたこと・覚えたことをコメントにメモしよう