第三種電気主任技術者試験 / 令和5年度第三種電気主任技術者上期試験 機械科目 / 各問題解説 / 問70
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令和5年度第三種電気主任技術者上期試験 機械科目 問70 解説 問7 問7

設問図

問7 電動機と負荷の特性を, 回転速度を横軸, トルクを縦軸に描く, トルク対速度曲線で考える。電動機と負荷の二つの曲線がどのように交わるかを見ると, その回転数における運転が安定か不安定かを判定することができる。誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. (1) 負荷トルクよりも電動機トルクが大きいと回転は加速し, 反対に電動機トルクよりも負荷トルクが大きいと回転は減速する。回転速度一定の運転を続けるには, 負荷と電動機のトルクが一致する安定な動作点が必要である。
  2. (2) 巻線形誘導電動機では, 回転速度の上昇とともにトルクが減少するように, 二次抵抗を大きくし, 大きな始動トルクを発生させることができる。この電動機に回転速度の上昇とともにトルクが増える負荷を接続すると, 両曲線の交点が安定な動作点となる。
  3. (3) 電源電圧を一定に保った直流分巻電動機は, 回転速度の上昇とともにトルクが減少する。一方, 送風機のトルクは, 回転速度の上昇とともにトルクが増大する。したがって, 直流分巻電動機は, 安定に送風機を駆動することができる。
  4. (4) かご形誘導電動機は, 回転トルクが小さい時点から回転速度を上昇させるとともにトルクが増大, 最大トルクを超えるとトルクが減少する。この電動機に回転速度でトルクが変化しない定トルク負荷を接続すると, 電動機と負荷のトルク曲線が2点で交わる場合がある。この場合, 加速時と減速時によって安定な動作点が変わる。 ✓ 正答
  5. (5) かご形誘導電動機は, 最大トルクの速度より高速な領域では回転速度の上昇とともにトルクが減少する。一方, 送風機のトルクは, 回転速度の上昇とともにトルクが増大する。したがって, かご形誘導電動機は, 安定に送風機を駆動することができる。

解説

電動機と負荷のトルク対速度曲線において、運転が安定な動作点となるのは、その点で電動機トルク曲線の傾きが負荷トルク曲線の傾きよりも小さい場合です。選択肢(4)の記述「この場合, 加速時と減速時によって安定な動作点が変わる」は、安定な動作点が系の物理特性によって一意に決まるという原則に反するため、これが誤りとなります。

電動機と負荷の安定動作点

電動機と負荷が連結されて運転される場合、そのシステム全体の運動は、電動機が発生するトルクと負荷が要求するトルクのバランスによって決定されます。この関係性をトルク対速度曲線で考えることが、運転の安定性を理解する上で重要です。

動作点の定義

電動機が回転し、ある一定の回転速度で運転を続けるには、電動機が発生するトルクと負荷が要求するトルクが釣り合っている必要があります。このトルクが一致する点が「動作点」です。

安定性の法則

動作点における運転の安定性は、その点でのトルク曲線の傾きによって判定されます。これは「安定性の法則」とも呼ばれる考え方で、以下のように定義されます。

ある動作点において、

  1. 回転速度がわずかに上昇したとき、電動機トルクが負荷トルクよりも小さくなる。
  2. 回転速度がわずかに下降したとき、電動機トルクが負荷トルクよりも大きくなる。

この条件が満たされる場合、システムは元の動作点に戻ろうとする力が働き、その動作点は「安定な動作点」であると判断されます。トルク対速度曲線上でこれを表現すると、動作点において、**電動機トルク曲線の傾きが負荷トルク曲線の傾きよりも小さい(負の領域でより急峻、または正の領域でより緩やか)**状態が安定条件となります。逆に、電動機トルク曲線の傾きが負荷トルク曲線の傾きよりも大きい場合は「不安定な動作点」となり、一度速度が変動すると元の動作点に戻らず、加速し続けるか減速し続けるかのどちらかになります。

かご形誘導電動機と定トルク負荷の特性

この問題の選択肢(4)を判断するためには、かご形誘導電動機のトルク特性と定トルク負荷の特性を理解しておく必要があります。

かご形誘導電動機のトルク特性

かご形誘導電動機のトルク対速度曲線は、一般的に次の特徴を持ちます。

  • 停止状態(回転速度0)では始動トルクが発生します。
  • 回転速度が上昇するにつれてトルクは増加し、ある速度で最大トルク(ひきはずしトルク)に達します。
  • 最大トルクを超えて同期速度に近づくと、トルクは急激に減少します。 このため、トルク曲線は低速域で上昇し、最大トルクに達した後、高速域で下降するS字のような形を描きます。

定トルク負荷の特性

定トルク負荷とは、そのトルクが回転速度に依存せず、常に一定である負荷を指します。例えば、コンベアやクレーンなどがあります。トルク対速度曲線では、横軸(回転速度)に平行な直線として表されます。

選択肢(4)の判断

上記の安定性の法則と、電動機・負荷の特性を踏まえて、選択肢(4)の記述を検討します。

  1. 電動機と負荷のトルク曲線の交点を特定する かご形誘導電動機のS字カーブ状のトルク曲線と、定トルク負荷の横軸に平行な直線が交わる場合、たしかに2点で交わる可能性があります。これは、かご形誘導電動機が最大トルクに達する前の低速域(トルク増加領域)と、最大トルクを超えた高速域(トルク減少領域)で定トルク負荷の線と交わる場合です。

  2. 各交点における安定性を判定する 安定性の法則(電動機トルク曲線の傾き < 負荷トルク曲線の傾き)を、それぞれの交点に適用します。

    • 低速側の交点(電動機トルクが増加する領域): この点では、かご形誘導電動機トルク曲線の傾きは正(増加)です。一方、定トルク負荷のトルク曲線の傾きは0です。したがって、「電動機トルク曲線の傾き > 負荷トルク曲線の傾き」となり、この交点は不安定な動作点となります。
    • 高速側の交点(電動機トルクが減少する領域): この点では、かご形誘導電動機トルク曲線の傾きは負(減少)です。一方、定トルク負荷のトルク曲線の傾きは0です。したがって、「電動機トルク曲線の傾き < 負荷トルク曲線の傾き」となり、この交点は安定な動作点となります。
  3. 加速時と減速時で安定動作点が変わるかどうかの判断 安定な動作点は、電動機と負荷それぞれのトルク対速度曲線の形状という、そのシステムの物理的な特性によって一意に決定されます。電動機が加速している途中であろうと、減速している途中であろうと、安定性の条件を満たす点は変わりません。したがって、「加速時と減速時によって安定な動作点が変わる」という記述は誤りです。常に、上記の安定条件を満たす高速側の交点が唯一の安定動作点となります。

トルク対速度曲線において、電動機トルクと負荷トルクの交点におけるそれぞれの曲線の傾きの関係を比較すると、運転の安定性が明確に見えてきます。

参考リンク

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