令和5年度第三種電気主任技術者上期試験 理論科目 問130 解説 問13 問13
問13 図のコレクタ接地増幅回路に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 電圧増幅度は約1である。
- 入力インピーダンスが大きい。
- 出力インピーダンスが小さい。
- 緩衝増幅器として使用されることがある。
- 増幅回路内部で発生するひずみが大きい。 ✓ 正答
解説
コレクタ接地増幅回路(エミッタフォロワ)は、出力がエミッタ側から取り出されることで深い負帰還がかかる回路であり、この負帰還の作用によって増幅回路内部で発生するひずみが小さく抑えられるため、「ひずみが大きい」とする選択肢(5)が誤りです。
コレクタ接地増幅回路の特性と負帰還
コレクタ接地増幅回路は、トランジスタのコレクタが交流的に接地され、入力信号をベースに加え、出力信号をエミッタ側から取り出す回路構成です。この回路の最大の特徴は、出力信号の電圧が入力信号の電圧とほぼ等しくなることです。
この回路動作を理解する上で重要な概念が「負帰還(フィードバック)」です。コレクタ接地回路では、エミッタの電圧が上昇するとベース・エミッタ間電圧が減少するように働き、入力電圧の変化に対して出力電圧が追従する構成になっています。これは出力の一部を逆位相で入力に戻す深い帰還がかかっている状態と見なすことができます。
この負帰還には、次のような性質があります。
- 回路の利得(ゲイン)が約1に固定される。
- 回路の入出力特性が安定し、増幅器内部で生じる非線形性による波形の乱れ(ひずみ)が打ち消される。
- 入力端からは大きな抵抗値(高いインピーダンス)として見え、出力端からは小さな抵抗値(低いインピーダンス)として見える。
これらの特性から、この回路は「バッファ」や「インピーダンス変換器」として利用され、信号源の電圧を変化させることなく次段の回路へ伝える緩衝増幅器の役割を果たします。
回路構成と判断のステップ
提示された図の回路構成に基づき、各選択肢の正誤を検討します。
- 図において、負荷となる抵抗がエミッタ側に接続されており、コレクタは直流電源の正極に直結(交流接地)されています。この回路構成から、エミッタの電位は入力ベース電位に常に追従しようとする動作(エミッタフォロワ)が特定されます。
- エミッタフォロワ動作により、電圧増幅度は1よりわずかに小さい約1となること、および入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスが低いという特徴が確認できます。
- 選択肢(4)の「緩衝増幅器として使用されることがある」という点は、上述の「高い入力インピーダンスで信号源への負担を減らし、低い出力インピーダンスで次段を駆動する」という緩衝の役割と一致するため、正しい記述です。
- 選択肢(5)の「増幅回路内部で発生するひずみが大きい」という点は、負帰還が深くかかっているためにひずみが低減されるという回路の原理に矛盾するため、誤った記述と判断できます。
トランジスタのベースに入力信号を流し込み、エミッタ側に繋がれた抵抗の両端から出力電圧を取り出す回路の挙動を重ねてみると、帰還による波形の安定化が見えてきます。