令和5年度第三種電気主任技術者上期試験 理論科目 問20 解説 問2 問2
問2 静電界に関する次の記述のうち,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- (1) 媒質中に置かれた正電荷から出る電気力線の本数は,その電荷の大きさに比例し,媒質の誘電率に反比例する。
- (2) 電界中における電気力線は,相互に交差しない。
- (3) 電界中における電気力線は,等電位面と直交する。
- (4) 電界中のある点の電気力線の密度は,その点における電界の強さ(大きさ)を表す。
- (5) 電界中に置かれた導体内部の電界の強さ(大きさ)は,その導体表面の電界の強さ(大きさ)に等しい。 ✓ 正答
解説
静電界における導体内部の電界の強さは常に零であるため、導体表面の電界の強さに等しいとする記述は誤りです。
静電界と導体の性質
導体は、内部に自由に動くことができる電荷(自由電子)を大量に含んでいます。電界中に導体を置くと、導体内部の自由電子は電界から力を受け、電界と逆の方向に移動します。この結果、導体の一方の端に負電荷が、反対側の端に正電荷が偏り、導体内部に外から加わった電界を打ち消す方向の電界が生じます。
この電荷の移動は、導体内部の電界が完全に打ち消されて零になるまで続き、最終的に導体内部は「静電平衡」という状態になります。静電平衡状態にある導体内部では、電荷の移動が止まり、内部のどこをとっても電界の強さは零となります。これに対し、導体の表面では電荷が分布しているため、表面には電界が存在します。したがって、内部と表面の電界の強さを比較すると、内部は常に零、表面は有限の値となり、両者は一致しません。
電気力線と電界の性質
電気力線は電界の様子を視覚的に捉えるための概念です。以下の性質に基づいて各選択肢を判断します。
- 電気力線の本数: ガウスの法則より、電荷 から出る電気力線の総本数は で表されます。これは電荷の大きさに比例し、周囲の媒質の誘電率 に反比例することを示しています。
- 線の交差: 電気力線の各点における接線方向は電界の向きを表します。もし電気力線が交差すると、その交差点において電界の向きが二通りに定まってしまうことになるため、電気力線が互いに交差することはありません。
- 等電位面との関係: 等電位面とは電位が等しい点の集合です。もし電気力線が等電位面に対して斜めに交差すると、電界の等電位面に沿った成分が存在することになり、電荷を等電位面に沿って移動させる際に仕事が発生してしまいます。しかし、等電位面上の移動で仕事は発生しないため、電気力線は常に等電位面と直交します。
- 電気力線の密度: 電気力線の密度は、その場所における電界の強さを表す指標として定義されています。
導体内部で電荷の移動が止まり、電界が打ち消される静電誘導の様子を重ねてみると、導体表面には電界が及ぶ一方で内部には電界が侵入できないという境界の性質が見えてきます。