令和6年度第三種電気主任技術者上期試験 電力科目 問140 解説 問14 問14
問14 電気絶縁材料に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- (1) 気体絶縁材料は,液体,固体絶縁材料と比較して,一般に電気抵抗率及び誘電率が低いため,固体絶縁材料内部にボイド(空隙,空洞)が含まれると,ボイド部での電界強度が高められやすい。 ✓ 正答
- (2) 気体絶縁材料は,液体,固体絶縁材料と比較して,一般に絶縁破壊強度が低いが,気圧を高めるか,真空状態とすることで絶縁破壊強度を高めることができる性質がある。
- (3) 内部にボイドを含んだ固体絶縁材料では,固体絶縁材料の絶縁破壊が生じなくても,ボイド内の気体が絶縁破壊することで部分放電が発生する場合がある。
- (4) 固体絶縁材料は,熱や電界,機械的応力などが長時間加えられることによって,固体絶縁材料内部に微小なボイドが形成されて,部分放電が発生する場合がある。
- (5) 固体絶縁材料内部で部分放電が発生すると,短時間に固体絶縁材料の絶縁破壊が生じることはなくても,長時間にわたって部分放電が継続的又は断続的に発生することで,固体絶縁材料の絶縁破壊に至る場合がある。
解説
固体絶縁材料の内部に生じるボイド内の電界強度は、材料の誘電率の差によって決定されるため、気体そのものの誘電率の低さのみを根拠に「高められやすい」と断定する選択肢(1)は誤りです。
誘電体中の電界と境界条件
誘電体の中に異種材料(ボイド)が混入している場合、ボイド内の電界強度はガウスの法則に基づく「境界条件」によって決まります。異なる誘電体材料の境界において、電束密度 の法線成分が連続であるという性質を用います。
電界の強さを 、誘電率を とすると、 が成り立ちます。固体絶縁材料の誘電率を 、ボイド(気体)の誘電率を とすると、界面に垂直な方向に電界が加わった場合、境界条件から次のような関係が導かれます。
ここから、ボイド内の電界強度 は次のようになります。
一般に、気体の誘電率は固体の誘電率よりも小さいため()、ボイド内の電界強度 は、周囲の固体内の電界強度 よりも大きくなります。この現象により、ボイド内部に電界が集中し、気体の絶縁破壊が生じやすくなります。
部分放電の発生と劣化のメカニズム
固体絶縁材料の内部に生じたボイドでの電界集中に関する判断手順は以下の通りです。
- 誘電体内部の電界集中を考える際、気体絶縁材料としての特性(誘電率が低いこと)自体を理由にするのではなく、周囲の固体との「誘電率の比(誘電率の不連続性)」に注目します。
- 固体絶縁材料の誘電率は、空気などの気体よりも大きいため、電界が印加された際にボイド内の電界強度が周囲より高くなることを確認します。
- ボイド内の電界が気体の絶縁破壊強度を超えると、固体材料全体が破壊される前であっても、ボイド内部だけで「部分放電」が発生することを確認します。
- 部分放電が長期間継続すると、放電によって生じる熱や化学的な変化により絶縁材料が徐々に劣化し、最終的に絶縁破壊に至ることを確認します。
選択肢(1)は、気体そのものの誘電率が低いことと、ボイド内の電界強度が強まる現象を直接的な原因と結果のように記述していますが、物理的には周囲の材料との誘電率の比による「電界の不連続性」が重要であり、誤った論理構成となっています。
固体絶縁材料とボイドの境界における誘電率の比と、そこに加わる電圧の向きを重ねてみると、ボイド内に電界が集中する様子が見えてきます。